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映画『怒り』作品情報
今回の絶対おすすめ映画シリーズは『怒り』です。
映画『怒り』は、一言で言って「とにかく素晴らしい映画」です。
映画ってこうでなきゃと思わせてくれる作品です。出演者全員の演技が本当に素晴らしくて圧巻です。
観終った後にも心に重たいものが残り続けます。もちろん悪い意味ではありません。
映画『怒り』は実話ではありません。吉田修一さんによる小説が原作となっています。
ただし、物語の中の事件は実際の事件(市橋達也の事件)がモデルになっていると言われています。
それでは『怒り』の映画紹介です。
映画『怒り』は2016年に日本公開された日本映画です。
上映時間は142分。
原作は吉田修一による小説『怒り』。
監督の李相日が吉田修一の小説を映画化したのは『悪人』に続き2作目となります。
監督は李相日監督。
『69』『フラガール』『悪人』『許されざる者』など。
【キャスト】
槙洋平…渡辺謙
槙愛子…宮崎あおい
田代哲也…松山ケンイチ
明日香…池脇千鶴
藤田優馬…妻夫木聡
大西直人…綾野剛
藤田貴子…原日出子
薫…高畑充希
田中信吾…森山未來
小宮山泉…広瀬すず
知念辰哉…佐久本宝
南條邦久…ピエール瀧
北見壮介…三浦貴大
他。
ありえない豪華な俳優たちが集結しています。
後でしっかり触れますが、一つも無駄使いがなく、すべてのキャストがただ役を生きているというなかなかお目にかかれない素晴らしい演技を魅せてくれています。
今まで李監督の作品に出演していた俳優も多く、信頼関係もかなりあったのではないでしょうか。
そして驚くべきことに広瀬すずはオーディションを受けて役を勝ち取ったらしいです。
すでに売れっ子なのに素晴らしい姿勢ですね。
映画『怒り』ネタバレ・あらすじ
ある夏の日、八王子の住宅街で夫婦が殺害される事件が起きます。
殺害現場の壁に残されていた血で書かれた『怒り』という文字。
警察は山神一也の犯行と断定し行方を追っていましたが、1年が経過しても山神を見つけることが出来ないでいました。
そこへ新宿歌舞伎町で山神の目撃情報が入ります。警察は山神が女装して逃走していると仮定し、指名手配写真に合成した山神の女装写真を加えます。
山神を追う刑事の南條(ピエール瀧)は山神の自宅に捜査に行った際に、山神の異常性を目の当たりにしていました。壁中に貼られた広告。そしてそこには山神が日々感じている世の中に対する文句が所せましと書き込まれていました。
物語は千葉へと舞台を移します。漁港で働く槙洋平(渡辺謙)は歌舞伎町に来ていました。
3カ月前に家出をした娘の愛子(宮崎あおい)が歌舞伎町の風俗店で働いていたため、愛子を迎えに行くためでした。
愛子は真面目な性格と慣れない仕事により精神をやられてしまっている状態でした。
洋平と共に千葉の故郷に戻ってきた愛子は、父の元で漁港で働く田代哲也(松山ケンイチ)と出会います。
田代は2カ月前に町にやってきて働きだしている青年で、それまでは各地を転々としていた生活で、素性を知る者も町にはもちろんいません。
本人も口数が少ないので田代の過去は謎のままでした。
田代と愛子は次第に打ち解け、お互いに惹かれ合っていきます。しかし洋平は父として、どこか手放しで喜べない気持ちでした。
舞台は東京へと場所を移します。
あるゲイの集まるお店で出会った藤田優馬(妻夫木聡)と大西直人(綾野剛)。
関係を持った2人は優馬の好意により優馬の家で暮らし始めます。
直人は東京にきたばかりで住むところも仕事もない状況だったのです。優馬は仕事もしていて交友関係も広い人間ですが、直人はまったく謎めいたままでした。
舞台は沖縄へと場所を移します。
母親に連れられ沖縄に引っ越してきたばかりの女子高生・小宮山泉(広瀬すず)は沖縄の学校の同級生・知念辰哉(佐久本宝)と無人島に来ていました。
大自然に感動し一人で島をブラブラしていた泉の視界に、廃墟のような小屋が入ってきます。
泉が小屋に近づくとそこには髭を生やした田中信吾(森山未來)が住んでいました。
聞くと田中を名乗る男は数日前に島にやってきて、一人旅の最中だと言います。
小屋を離れ帰ろうとする泉に、田中は「できたらでいいんだけど、僕がここにいるのは誰にも言わないでほしい」と頼みます。
泉はその頼みを聞き入れ誰にも言わないと約束します。
テレビでは指名手配犯の山神が整形手術をして顔を変えている事が判明したと報道していました。
切れ長の一重まぶたが山神の特徴とされていました。
千葉では愛子と田代の仲がさらに深まっていて、愛子は洋平にアパートを借りて田代と一緒に住みたいと告げます。
洋平は心の中では心配しながらその頼みを受け入れます。
しかし洋平は田代の過去が気になり、田代が千葉の漁港に来る前に働いていたというペンションを訪ねます。
そこで洋平は田代が高橋という名前で働いていたという事実を知ります。
千葉に帰った洋平はそのことを愛子に伝えます。
愛子は実は田代から事情を聞いていると言います。田代は大学生の時に父親が作った借金に苦しんでいて、支払う義務はないのに今も逃げ続けていると愛子に話していました。
そんな状況の時にテレビで山神の事件が扱われているのを目にした洋平は田代が山神に似ていることに激しく動揺します。
愛子は田代を信じたい気持ちでいっぱいですが、洋平と愛子は田代が殺人犯なのではと疑いを持ち始めます。
東京では優馬と直人にも変化が訪れていました。
優馬は病気の母親にも直人を紹介し、お互いに必要な存在になっていた2人でしたが、優馬の友人の家に連続して空き巣事件が起こり、優馬は直人に疑いを持ちます。
優馬は中目黒のカフェで直人が若い女性(高畑充希)と会っているところも目撃していて、あれは誰だと直人を問い詰めます。何も言わない直人に、お前は俺を裏切っているんじゃないか?と優馬は告げます。
直人は優馬の前から姿を消し、優馬がいくら連絡しても直人が電話に出ることは2度とありませんでした。
しばらくして、優馬はテレビで山神のニュースを見て気が動転します。山神の特徴であるほくろが直人にもあったからでした。そんな時に優馬の携帯電話に警察から電話が入ります。
大西直人さんを知っていますか?という警察の問いかけに優馬は激しく動揺し、知りませんと言って電話を切ってしまいます。
沖縄では泉が辰哉と那覇でデートをしていました。
那覇で田中を見つけた泉は田中に駆け寄り、辰哉と3人でご飯を食べることになります。
泡盛を飲んだ辰哉は具合が悪くなってしまい、田中と別れた後に泉と辰哉ははぐれてしまいます。
辰哉を探す泉は人気のない公園であろうことか米兵に襲われてしまいます。
泉が無理やりに襲われている間、実は辰哉は同じ公園の水道にいました。
その様子を目の前で見ながらも、怖くて助けに行けずにただ隠れていた辰哉。
どこからか「ポリース!ポリース!!」と叫ぶ声が聞こえ、米兵は逃げていきました。
横たわる泉の元に駆け寄った辰哉は警察を呼ぼうとしますが、泉は「警察を呼ばないで。誰にも言わないで。」と辰哉に言います。
心に大きな傷を負った泉は家に引きこもってしまいます。
そして辰哉も何もできなかった自分を責め、そもそも那覇に行こうと自分が誘わなければこんなことは起きなかったと自分を責め続けました。
この事を遠回しに田中に相談した辰哉は、田中が実はその現場を目撃していたことを知ります。「ポリース!ポリース!!」と叫んでいたのは自分だと田中は言います。
自分は足が震えて助けに行けなかったと。
しかし、田中のこの話は真っ赤な嘘でした。
田中は気分にムラが非常にある男で旅館で働き始めていて仕事もしっかりやって認められていた面もありましたが仕事中にお客の荷物を投げ捨てて八つ当たりをしたりと、豹変する田中を見て辰哉は驚いてしまうこともありました。
ある時、田中は狂ったように旅館の食堂で暴れまわりそのまま姿をくらませてしまいました。
千葉では愛子が洋平の元へやってきて「警察に通報した」と告げました。
出勤する前にカバンに大金を入れておきましたが「八王子の事件の犯人ではないなら帰ってきてほしい」と告げますが、田代は姿を見せませんでした。
警察が来て調べますが山神の指紋と田代の指紋が一致しなかったことを報告します。その結果を聞き洋平は脱力し、愛子は泣きじゃくりました。
田代は嘘をついていませんでした。洋平と愛子は田代を疑ってしまったことを強く後悔しました。しかしその後田代から連絡が入り愛子は田代の元へ向かったのでした。
沖縄では辰哉がいなくなった田中を探して廃墟へとやってきていました。廃墟の壁には『怒り』と書かれていてさらに泉が米兵に襲われた時のことが面白おかしく書かれていました。
廃墟の外では田中がハサミを使って自分のほくろをえぐり取ろうとしていました。
辰哉の存在に気が付いた田中は辰哉に本性をさらけ出します。
自分を信頼していた辰哉を馬鹿にし、泉が襲われていた時に陰で見ながら笑っていたことを話します。
辰哉は落ちていたハサミを拾い田中に向け…。
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映画『怒り』感想・評価
冒頭でも書かせて頂きましたが、観終ってからしばらくは後遺症に悩まされる映画です。
心にずっと残ると言うか。でも僕は映画を観終った後にこういう後遺症になることが好きです。なかなかここまで余韻が残る作品は日本映画では少ないと個人的には思います。
話も重たいのはもちろんなのですが、そのストーリーを非常にクオリティの高い演技でこれでもかと畳み掛けてくるのでかなり心に来ます。
演出が厳しいことで有名な李監督ですから、撮影現場もきっと大変だったんじゃないだろうかと勝手に想像してしまいますが、元々実力のある役者ばかりが出演していますからさらにとんでもないことになっています。
感情を爆発させる芝居が多いこういう映画では、やりすぎたり演技コンテストじゃないんだからみたいな事が多々起きるのですが、この『怒り』はまったくそんなことはなく、ただその役の人物たちがその町で生きていると思わせてくれます。
広瀬すずちゃんも良かったですし、オーディションを受けてまでこの映画に出演したというのは本人も事務所も女優としての成長を望んでのことなのでしょうから、今後も本当に楽しみなすごい女優になっていくのではと思います。今でも充分すごいですけど。
高畑充希さんもそこまで出番多くないけど、こんな演技できるんだと驚かされました。
池脇千鶴さんなんて超上手い女優さんなのに出番もあんまりなくて「どれだけ上手い人ばっか出るんだよ!」と思ってしまいました。
もちろん宮崎あおいさんも素晴らしかったですし。
渡辺謙さんも妻夫木聡さんも言わずもがなで良かったですし、綾野剛さんもこの中に入ると劣るのでは?と思っていましたが、役柄もありますが悪目立ちすることはなかったです。
とても良かっただけにドラマのハゲタカであんなお粗末な演技をしてしまうのかは謎です。
松山ケンイチさんも非常に合っている役で彼の得意な演技をしている感じだったので良かったです。器用な人ではないから合わない役やるとまずいことになる印象ですが、この作品ではすごく魅力的でした。
そして中でも群を抜いて素晴らしかったのは森山未來さんで、もうなんと形容していいかわからないぐらい、圧倒的にすごかったです。
ずっと森山未來はすごいって噂は役者時代から散々聞いてきましたが、今までも出演作品観てすごい役者という印象でしたが、この映画でさらに半端じゃない俳優だと確信しました。
優しさも狂気も葛藤も他の感情も諸々、すべてが混ざり合った状態で演じていると言うか。
わかりやすく一つの感情を演じるのではなく、しっかりすべてが内在しているんです。もう見事というかすごいというか、まさに圧倒的でした。
とにかく役者陣の演技がリアルです。みんながみんなリアルです。
これだけでもとっても価値ある映画ですし、さらにストーリーも素晴らしいです。
観ている方も大勢いる映画だと思いますが、まだの人は是非観て欲しいです。
すでに観ている人は感想に興味ありますのでよかったら宜しくお願いします。
おすすめ映画です。ぜひ。
映画『怒り』
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