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映画『花戦さ』作品情報
今回の絶対おすすめ映画は『花戦さ』です。
映画『花戦さ』は野村萬斎・佐藤浩市・市川猿之助・中井貴一・佐々木蔵之介ら豪華キャストが出演する時代劇です。
織田信長、豊臣秀吉、千利休、そして野村萬斎演じる花僧の池坊専好らによる感動ドラマとなっています。
映画『花戦さ』は実話というわけではありませんが、花僧の池坊専好は実在した人物とされています。
ロマンを感じる映画に仕上がっています。
それでは映画『花戦さ』の映画紹介です。
映画『花戦さ』は2017年に公開された日本映画です。
上映時間は127分。
原作は鬼塚忠による小説『花いくさ』。
監督は篠原哲雄監督。
『真夏のオリオン』『昭和歌謡大全集』『深呼吸の必要』などを監督しています。
キャストは
池坊専好…野村萬斎
豊臣秀吉…市川猿之助
織田信長…中井貴一
前田利家…佐々木蔵之介
千利休…佐藤浩市
吉右衛門…高橋克実
池坊専伯…山内圭哉
池坊専武…和田正人
れん…森川葵
石田三成…吉田栄作
浄椿尼…竹内景子
俵屋留吉…河原健二
ほか。
映画『花戦さ』ネタバレ・あらすじ
応仁の乱がの後、戦国時代が続いている中で織田信長が台頭していた1573年、京の中心地には長法寺六角堂には生け花によって仏の道を説く花僧という者たちがいました。
彼らは池坊という名前を名乗り暮らしていました。
その中に池坊専好という花僧がいました。
専好はとても明るい性格で誰とでも分け隔てなく接し、亡骸を見かけると花を供えて念仏を唱える心優しい花僧でした。
どこかあっけらかんとしてしいて、花をなによりも愛していて、世間のことに疎く、自分のことは二の次三の次に考えるような、見るからに純粋そうな人間でした。
ある日、専好は執行という寺を取りまとめる地位にある専栄に呼ばれます。そこには専好の兄弟子にあたる専伯(山内圭哉)もいました。
専栄は専好に織田信長の岐阜の城に行って花を活けてくるように言われます。
本来ならば専栄や専伯が赴きたいところでしたが、あいにく2人とも予定が入っていて無理なので、是非専好に行って欲しいというお願いでした。
専好は最初乗り気な様子ではありませんでしたが、専栄が松を使った生け花をお願いすると顔色を変えて喜び勇んで出かけていきました。
本当は専栄も専伯も予定などありませんでした。
織田信長の逆鱗に触れると平気で人を叩き斬るという噂を聞いていた2人は織田信長の元に行くことを恐れ、弟子の専好に行かせたのでした。織田信長の前で粗相をすれば命はないものと考えていました。
現代で言う『天然』の専好で大丈夫かなという不安を持ちながらも専好に行かせたのでした。
専好は弟弟子にあたる池坊専武(和田正人)とともに織田信長の城へと向かっていて、旅の途中で専武から織田信長の性格のうわさを聞かされます。
一瞬ぎょっとした表情をした専好でしたが、専武が「今ものすごく勢いのある昇り龍のようなお人」という織田信長に対する表現を聞いて一気に表情が明るくなります。専好は松で表現する生け花のイメージを頭に描いたのでした。
城に到着し、昇り龍をイメージした松の生け花を作るべく準備を始めます。
ド派手で力強い生け花を制作しているとことに千利休(佐藤浩市)が通りかかります。利休は専好の作っている松を見て驚き、「これは面白いことになりそうだ」とほほ笑んで見ていました。
いよいよ専好の作った松がお披露目される日がきました。城の大座敷に完成した生け花が飾られます。
大座敷から一段下がった部分には信長家臣の前田利家(佐々木蔵之介)、豊臣秀吉(市川猿之助)、石田三成(吉田栄作)、そして千利休が顔を伏しています。そこへ織田信長(中井貴一)がやってきました。
信長は松をじっと見つめた後に、家来たちに向かって「うぬらこの花をいかに見る?」と訊ねます。信長の機嫌を損ねたくない家来たちは口ごもります。
信長はこれに怒り「遅い!」と一喝しました。家来たちは口々に低い評価を口にしました。「奇をてらい過ぎているのでは」と口にします。
そこへ襖の奥にいた専好が言葉を発します。
襖が開くと専好と専武が頭をひれ伏して控えていました。専好はなぜこのような松を作ったのかを説明しようとして頭を上げてしまい、家来たちに怒られます。
専武も焦っています。しかし信長はこれを咎めることなく説明をさせました。
専好は「昇り龍でございます!」と嬉しそうに話し始めます。天井に龍のように昇っていく信長をイメージして作ったと喜々として話しました。
信長は専好の意図を訊くと松の前に胡坐をかいて座り、「気に入った!」と言って持っていた扇子をパチンと鳴らしました。専好も安堵します。
しかし次の瞬間、あまりに派手な生け花のため重量がありすぎて枝のつぎはぎ部分が音をたてて折れていってしまいます。
空気が緊迫し、家来たちは「まずい…」といった空気になり青ざめます。
しかしここで豊臣秀吉が突然立ち上がり、「見事でございます!」と言葉を発しました。
秀吉は手を叩きながら「扇子一つで松の枝を折ってしまうなど、誠に見事でございます」と機転を利かしてフォローしました。
場は和み、信長は「サルの分際で!」と言い、専好に「益々精進するように。特に枝の継ぎ目にな。」と言って立ち去りました。専好は秀吉に救われた形になりました。
専好は松の元へ駆け寄り必死で折れた巨大な枝を持ち上げようとしました。
信長は家来に向かって「武人たるもの茶と花を、人の心を大事にせよ、それは上に立つ者の道じゃ」と言葉をかけました。さらに秀吉に向かい「わかったかサル」と言ってその場を去っていきました。
その後、長法院六角堂には信長から褒美として米や織田家の家紋の入った高価な花道具が届けられました。
専栄と専伯は専好の働きを実感し、専栄は「専好には何か(才能が)あるのかもしれないな」と呟いていました。
専好は今までと変わらず花の道にまい進する日常に戻っていました。
12年の歳月が流れます。
織田信長が失脚し、豊臣秀吉が台頭していました。六角堂では専栄が亡くなり、専好の兄弟子である専伯が旅に出たまま戻らないため、専好が執行の地位に就くことになります。
町人たちに生け花を教えている時に張り切って生け花の指導をしている者がいます。
専好と幼い頃からの友人で町の小物問屋を営んでいる吉右衛門(高橋克実)です。吉右衛門も生け花が好きで腕前も大したものでした。
生け花を教わっている町人が「専好さんに習いたい!」と言いますが、吉右衛門は「執行という偉い人になられたんだ。お前には俺で十分だ」と言って指導していました。
専好自身は気軽に町の人たちに教えたい様子で、寂しげな表情を浮かべていました。
専好は執行になってから武家屋敷などで生け花をすることが多くなりますが、本当はもっと自由に花を楽しみたいと考えていました。執行という立場が専好には息苦しいだけでした。
鴨川の川辺で亡骸を見つけた専好は花を供えて念仏を唱えていました。すると1人の男が亡骸からおいはぎをしようとしているのを見つけて駆け寄って追っ払います。
そこには女の子の亡骸があり、専好は念仏を唱えようとしますが、なんとその女の子は生きていてゆっくりと目を開けたのでした。
専好はその子を保護して六角堂に連れて帰りました。
しかしお粥を作って食べさせようとしてもまったく食べず、話しかけても何も答えません。名前もわからいままで弟弟子の専武も困っていました。
専好は蓮のつぼみを取ってきてその女の子の部屋に置いておきました。蓮のつぼみは花を開く時にかすかに音を立てました。
女の子はこの音に反応し蓮を見つめます。すると突然部屋の襖に蓮の画を描き殴り始めました。
女の子が行動に出たことで専好は「花の力や!」と喜んでいました。
ようやく動くようになった女の子でしたが、相変わらず口は一切ききません。
専好は一緒に花を摘みに行った時に、名前がないと呼びづらいと言って、その女の子を「蓮(レン)」と名付けました。
蓮が毒草を取ろうとしたので専好は止めていかに怖い毒草かを説明しました。
専好は六角堂に置いておくのは難しいと思い、尼僧の浄椿尼(竹下景子)に預かってもらう事にしました。
心おきなく絵を描いていいと言われる蓮でしたが、襖に描くのは冗談交じりに禁止されました。
吉右衛門が店先に生け花をしてほしいと専好に頼んできます。専好は久しぶりに立場を忘れて心から生け花を楽しみ、独特な作品を作ります。
本来の専好の良さが出た生け花に吉右衛門も喜びました。
吉右衛門は息苦しさを感じている専好の気持ちを長い付き合いでわかっていたのでした。専好は吉右衛門の心遣いに感謝しました。
専好が帰った後に、吉右衛門の店先の生け花に目を留めた人物がいました。信長の城で会った千利休でした。
利休は吉右衛門に話しかけ、自身の茶室である草庵に専好を招待する手紙を渡しました。
利休はこの頃秀吉の元にいる茶人として有名人となっていたので、大いに驚き息せき切って専好の元にやってきました。「お前利休さんと知り合いなのか!?」と専好に訊きますが、専好には利休のことを覚えていませんでした。
しかし利休の招待に応じ茶室へと赴くことにしました。
専好は茶室の草庵に辿り着くまでの通路の朝顔の綺麗さに見惚れます。
さらに茶室へと入ると素朴な生け花が壁に掛けられていて、専好はこの生け花にも興味を抱きマジマジと見つめていました。
そこへ背後から「気になるようなら変えて頂いて結構ですよ」と声を掛けられます。利休でした。
専好は利休のことを覚えていなかったことを詫びます。専好は覚えていられないのです。利休は専好のそんな部分を垣間見て執行という役職が辛いのではないかと心配します。
専好は「自分には執行は向いていないと思います。堅苦しい生け花だけすることは苦行です。辛いです。でも執行だからしっかりしなきゃと思うのです。
そうすると楽しく花を生けられないのです。花に申し訳ないのです!」と言って顔をくしゃくしゃにして号泣しました。
利休は感情を露にした専好に驚き「泣くことはないだろう」と言いますが、優しく2服目のお茶を専好のために立ててあげました。
専好は利休と話したことで悩みを吹っ切りました。専好の生け花にはかつての専好らしさが蘇り、町の人々も嬉しそうにしていました。
吉右衛門も嬉しそうで「茶と言うのほんの束の間なのやと専好が言い出してな。その束の間こそが生きているということで、花の中にも同じものがあって、それを生けてやりたいんやと言っておる」と町の人々に専好の思いを話していました。
利休が専好様子を見に来た時も専好のは利休に元気な姿を見せ、花に対する思いを語りました。
秀吉が利休の茶室草庵にやってきました。朝顔が摘まれた後で、一凛だけ茶室の壁に飾られていました。
秀吉は利休の立てたお茶をぞんざいにすすり、機嫌の悪さを露骨に出します。茶室の狭さに文句を言ってさらに利休の大切な黒茶碗を放り投げます。利休は秀吉に怒るわけにもいかずじっと耐えています。
秀吉は近く帝をびっくりさせるような金の茶室を作ることを話します。利休は金の茶室に魅力を感じず乗り気でない様子を見せます。
しかし秀吉は金の茶室を作るように利休に命令し、利休は秀吉の圧力にどうすることもできずこの提案を光栄なことと言って受けました。秀吉は満足そうに再び茶室でゴロリと横になりました。
2年が経過します。
蓮が武家の屋敷でお抱えの絵師になるという話が持ち上がります。しかしこの直後蓮はどこかに行方をくらませてしまいました。
同じ頃、町では秀吉が主宰する『天神さんのお茶会』が話題になっていました。
噂を聞いた者たちは『どうせ高価な茶碗を持っている者しか参加できないのだろう』とぼやいていましたが、どうやら今度の茶会はどんな茶碗でもオーケーで、誰でも気軽に参加できるというものでした。
お茶会が開催されている10日間はお茶も飲み放題ということで町人たちは大いに盛り上がります。
お茶会に関して利休せんこうは専好の力を借りたいと専好の元にやってきますが、洞窟で行方不明になっていた蓮が見つかったという情報を聞いた専好はすぐに駆け付けました。
洞窟に行くと壁にはハスの画が書かれていました。専好は心配をかけた蓮を一切叱らず、絵を見て「山にこもった甲斐があった」と蓮を褒めました。
蓮は武家のお抱え絵師になると自分の身元がわかってしまうと恐れて逃げ出していたのでした。
専好はどういうことか聞こうとしますが、蓮は迷惑がかかると言って理由を言いません。
専好は仕方なく蓮を一つの小屋に住まわせることにしました。蓮は変わらず絵を描き続けました。
天神さんのお茶会が開催されます。北野天満宮には多くの人がやってきています。武家なども来ていて様々な身分の人間が交わっています。
茶人やお茶の覚えがある者は路上のようなところではあるもののお茶を振舞っています。
秀吉も直々に金の茶室でお茶を振舞います。秀吉のいる金の茶室には長蛇の列ができていました。
利休に生け花を頼まれてやってきた専好は吉右衛門とお茶会に見惚れて浮かれて寄り道をしていました。
椅子に腰かけて様子を眺めているとかつて信長の城で会った前田利家が隣に座ってきます。
普通に話しかけてくる前田利家に驚く専好。専好は前田利家のことを覚えていませんでした。利家は笑い、まさか関白の秀吉様のことも覚えていないのかと訊きます。
専好はまったくわからない様子です。利家は『あの時に手を叩いてお見事言っていたのが秀吉様だ』と専好に教えました。専好はただただ驚くばかりでした。
利休が専好にした頼み事は利休が茶を振舞っている場所に生えている木の枝に生け花をしてほしいというものでした。専好は楽しみながらカラフルな花々を生けて行きました。
専好を支えるために土台になっている吉右衛門は重さに顔を歪めていました。人々は専好のカラフルで可愛らし生け花を微笑みながら見ていました。
利休も嬉しそうです。利休の前には長蛇の列ができていました。
秀吉の金の茶室は人が途絶えていました。
家来は秀吉の労をねぎらいますが、通りがかりの町人が利休のお茶が大盛況だと話しているのを耳にした秀吉は石田三成を連れて笠をかぶって素性を隠し利休の場所へと向かいました。
利休の前にはまだ長蛇の列ができていました。さらに並んでいる子供が「金の茶室もおもしろかったけど所詮サルだ」のようなことを話していて秀吉は内心激怒していました。
夕方になり利休と専好と吉右衛門は互いの労をねぎらい利休の立てたお茶を楽しみました。利休は専好の生け花に満足していました。
専好は利休の茶碗を見て「黒が好きなのですか?」と訊ねました。利休は他の色も好きで金も好きだが、今は黒が好きだと答えました。理由は『懐が深いから』と答えました。
10日間開催予定だったお茶会は次の日に取りやめになってしまいます。町人たちはがっかりしました。秀吉の嫉妬であることは明白でした。秀吉は利休の元を訪ねます。
秀吉は利休に怒りを露にし利休の大切な黒茶碗を投げ捨てて「黒と金、どちらが好きか?」と問いていました。
頭を抑えつけられた利休は「どちらもそれぞれの魅力がある」と答えます。
秀吉は「おぬしは利口よのぉ」と言い、さらに「利口なおぬしがなぜ私の好みがわからぬのか!」と利休の頭を足で踏みます。
利休は秀吉に自分の不甲斐なさを謝罪しさらに精進することを告げました。
秀吉は利休の頭を蹴ると茶室を出て行きました。残された利休は秀吉が投げ捨てた黒茶碗を大切そうに撫でていました。
3年後、秀吉は天下統一を果たしていて、その傲慢さはさらに際立っていきました。
織田信長の葬儀を行った寺の山門の上に、利休の木造が飾られていて石田三成が秀吉が門をくぐる時に利休の足の下を通ることになるというのは許されることではない、さらに信長様と同等に扱われているのはどういうことかと思いませんか、と進言しました。
秀吉はこの言葉を聞いて怒りを露にしました。
専好は蓮の小屋へ行き絵を見ていました。蓮が書いたこれまでと違う感じの猿の画が気になりました。蓮は「ととさまのような絵を」と呟き、専好は蓮の父親が絵師であることを知ります。
専好は前田利家に呼ばれます。
前田利家は利休の木造が門の上に飾られていて、足の下を秀吉様がくぐることになるので、木造を撤去し利休から秀吉様に詫びを入れて頂きたいと思っていることを相談します。
専好に前田利家がなぜ相談したかと言うと、利休の言い分は「寺院が勝手に建てたものだから私が詫びる必要はない」というもので、困り果てた利家は専好なら利休を説得できるのではないかと考えたからでした。
しかしそのすぐ後、利休の木像は秀吉の命令で取り払われ、河原にはりつけの形でさらされていました。利休は町人に人気があったので、人々は悲しい気持ちでさらされた木像を見ていました。
専好は梅の花を持って利休の茶室を尋ねました。利休は庭にいました。思い悩んでいる様子の利休に専好は梅の話をして、利休と共に茶室に入りました。
専好は梅の花を生けながらつぼみを見せて、「この梅が咲くのを見たくはありませんか?」と訊きます。
そして感情を露にし「なぜ謝罪しないのですか?私の心をとかしてくれたように、秀吉様をもてなす気持ちで詫びることはできませんか?」と言葉を続けました。
利休は自分が見失っていたものがあったことを気付かされ認めました。
しかしその後に「これが最後のもてなしじゃ。わしにはもうこれより他に上様と向き合う術がない」と話しました。
利休は自分の命を終わらせることを覚悟していました。
専好は食い下がります。「わたしへのこのようなもてなしを誰が喜ぶのか理解できない!」と涙ながらに訴えました。
しかし利休はこれに答えず、専好に立てたお茶を差し出し、最後に大切にしていた黒い茶碗を専好に託しました。
茶室に白装束を身にまとった利休がいます。利休は梅のつぼみを見ながら「もう少しやったなぁ」と呟きました。
利休は切腹をしました。利休の首は鴨川の河原にさらし首にされました。
町人たちは泣きながら利休の首を見ていました。専好は河原に降りて利休の元へ行こうとしますが、番人に止められます。専好はその場で石を積み上げてお経を唱えました。
秀吉は城に1人でいました。雨の降る中庭を見ながら、雨に濡れている草履をやりきれない表情で見つめていました。
これをきっかけに専好は生け花がどうしてもできなくなってしまいます。
六角堂から花が消えてしまい町人たちは激しく心配をします。そこで吉右衛門が「花の力」の助けを借りることにしました。
吉右衛門が中心となり町の人たちは花を持ち寄ってきて、大量の花が集まりました。
この光景に専好が驚いていると専武が「利休さんの四十九日です。たくさんの花が集まりました。でもこのままではただ枯れてしまうだけですね」と言いながら生け花のハサミを専好に手渡しました。
町の人たちみんなで生け花を行います。専好も参加して渾身の生け花を作ります。そこへ蓮が現れて、梅が思い入れのある花だと聞いたからと遅咲きの梅を探し回って持ってきてくれました。
しかしこの時、様子を偵察に来ていた石田三成に蓮は見つかってしまいます。蓮はやはりなにか事情のある少女でした。
花いっぱいになった本堂を見て、専好は集まってくれた全員に涙を流しながらお礼を言いました。
秀吉には後継ぎとなる子ども鶴松が誕生していて、秀吉は鶴松のことで頭がいっぱいになっていました。
秀吉が鶴松と遊んでいるところに石田三成が来て利休の四十九日で町の人間が集まっていたことを報告します。
さらに専好のこともこのままにしておいてよろしいのかと訊ねますが、秀吉は利休の名前が出ると顔色を変え「利休の話をするな!捨ておけ!」と何も手を打たなくていいと怒鳴ります。
石田三成は六角堂でむじんさい(絵師)の娘(蓮のこと)を見たことも報告します。
秀吉は少し表情を変えますが、静かに「捨ておけ」と言いました。
1591年、秀吉は職業ごとに住む地域を設定し、無理やりな引っ越しを余儀なくされた町人たちは不満を漏らしていました。
そんな時に秀吉の子供の鶴松が他界してしまいます。人々は利休さんにあんな仕打ちをするからだと言って利休さんの呪いだと噂していました。
この噂を耳にした専好は「利休さんは人を呪うようなお人じゃない!」と怒りました。
しかし秀吉の人気はどんどんと落ちていて、サル呼ばわりは当たり前でついには秀吉と鶴松のことを悪く書いた詩が利休の名前で貼りだされて問題になります。
秀吉は鶴松の死のショックと群衆の行いで心を乱し、ついには町の人気者だったとときや詩が上手いという理由だけで留吉(河原健二)を犯人と決めつけ連れていきます。
怒りは収まらず2人は処刑され鴨川の河原に首がさらされました。
橋の上から泣きながら手を合わせる町人たち。利休の四十九日を大々的にやったことが問題だったのではないかと吉右衛門は責任を感じていました。
さらに専好のことを捕らえて池坊をつぶすことが目的なのではないかと考えます。
石田三成に見つかった蓮は捕まって牢屋に入れられていました。専好と吉右衛門は蓮が住んでいた小屋に行きます。蓮の描いた絵がめちゃくちゃに散らばっています。
吉右衛門が猿の画をみて「むじんさいだ」と言葉を発します。
むじんさいは元々人気のある絵師で秀吉から絵を描くように頼まれます。
しかしむじんさいの描いた絵を見た秀吉は「わしはこんな猿のような顔じゃない!」と激怒しむじんさいをはりつけにして、むじんさいの娘は河原の乞食に渡されたのだと吉右衛門は専好に話しました。
そして秀吉はむじんさいの描いた絵をすべて燃やしたために、むじんさいの画はもうほとんど残っていないと付け加えました。
専好は身体を震わせて「上様は狂っているのか!?」と怒ります。
吉右衛門が専好をなだめ、自分が探りを入れてみるから待つように言います。
牢屋に入れられていた蓮は隠していた毒草を食べて自害してしまいました。蓮の亡骸を見た秀吉は「捨てておけ。こんなもの。」と言っただけでした。
さらに吉右衛門が蓮のことを探っていたことがバレて捕まってしまいます。
吉右衛門は市中引き回しの刑にされた後、六角堂に引き立てら、人々が見ている前で謀反を企む者として斬られ絶命しました。
専好は堂内で花に八つ当たりをします。そして泣きながら「仏などどこにおるんや!蓮も吉右衛門もいなくなってしまった」と嗚咽しました。
横にいた専武はかける言葉が見つからず、「花に罪はありません」と言葉をかけるのがやっとでした。
専好が桜並木を歩いています。専好は利休のことを思い出して利休と過ごした時間を反芻していました。専好の中にある覚悟が宿りました。
専好は前田利家の元を訪れ、町民が秀吉のことを悪く思ってなどいないことを、生け花で秀吉様にお伝えしたいと伝えます。
利家は謀反を危惧しますが、専好の気持ちを確かめてその願いを聞き入れました。
専好は人々に秀吉様の元に生け花をしに行くことを伝えます。
専武は「自ら死にに行くようなものだ」と言って止めます。しかし専好は「わしは勝つつもりやけど、この戦。これは花の戦や」と専武に言いました。
「花の中には仏がいて、命の美しさを伝える力がある、それは抜いた刀を鞘に納めさせることができるのではないだろうか。池坊を名乗るなら花を持って世を正そう」と専好は池坊たちに話しました。
花をか集め町人に大きな鉢を作ってもらい、池坊の花僧を連れて専好は前田利家の屋敷へと向かいました。生け花をみんなで懸命に作りほとんどの作業が終わりました。
専好は突然みんなに寺に戻るように言います。
しかし花僧たちはこれに従わず「最後までお供します」と言ってその場に留まりました。専好は微笑んで自分あての破門状を出して、「もしもの時は池坊を頼む」と専武に告げました。専武が花を差し出すと専好は「勝負だな」と呟きました。
夜になり専好は1人生け花の前に座り、亡くなった者たちを花になぞらえていました。吉右衛門、蓮、とき、留吉に頼むでと呟きました。
翌日、前田利家の屋敷に秀吉と石田三成ら家来がやってきます。いよいよ大座敷の襖が開けられ、秀吉の前に大きな松の生け花が姿を現しました。
松には他の花々も装飾されていて壮観な景色が広がっています。そしてその生け花の前にはひれ伏している専好がいました。
秀吉はその生け花に圧倒されているようでした。利家が口を開き池坊より秀吉様への贈り物でございますと伝えました。秀吉は小さく「池坊」と呟きました。
専好が顔を上げ「上様はどの花がお好きですか?」と訊ねます。
秀吉は生け花に圧倒されて専好の存在に気が付いていなかった様子です。秀吉はそれぞれの花を褒め「どれも美しいと思うぞ」と答えました。
専好はその答えを聞くと「ではこれはいかがでしょう」と言って、松の後ろにむじんさいの画の巨大な掛け軸を広げました。
猿の画が書かれていて猿が生け花の松の枝に乗っているように見えます。
「むじんさい…」、利家の顔色は真っ青になります。石田三成は怒りに駆られています。さらに専好は臆することなく秀吉に「お猿はいかがでしょう。それぞれに美しさがあるとは思いませんか?」と訊ねました。
石田三成が刀を抜いて「出家の分際で!」と専好に近づきます。利家が叫びます。「この男は刃を向けられて寸分も動いておりません。相当な覚悟を持っていると思われます。冥途の土産にお答えだけお願いできませんでしょうか!」と秀吉に告げました。
秀吉は怒りに震えながらもむじんさいの描いた数匹の猿を見つめ「軽やかじゃ。猿の分際で生意気にも世を謳歌している…」と言葉を発しました。
専好は刃を当てられながら「軽やかで賢いのは猿の美しさでございましょう。同じようには何はそれぞれの美しさ、赤には赤の金には金の、黒には黒の美しさがございます」と言って利休から譲り受けた黒茶碗を出しました。
そして「利休様は己の死を持ってそのことをお伝えしたかったのではないでしょうか」と言葉を続けました。「お茶道として、1人の長き友として」と。
秀吉は金の茶室の話をした時の利休の苦い顔、そして信長の『武人たる者、茶と花を、人の心を大事にせよ。それこそが上に立つ者の道じゃ』という言葉を思い出していました。
さらに秀吉は信長にちゃんと聞いているかと叱責されたことを思い出し…
専好の運命は…?
秀吉の反応は…?
結末は本編をご覧ください。
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映画『花戦さ』感想・評価
映画『花戦さ』の感想ですが、まず本当に豪華キャストです。
織田信長を演じた中井貴一さんは少しの出番ですが、それでもすごく重要な役ですし印象にもしっかり残っています。
佐藤浩市さんが千利休!?と正直最初は思ったのですが、実際に『花戦さ』を鑑賞すると全然違和感ないというかむしろ合っていて「ああ、やっぱりすごいなぁ」と思わされました。
市川猿之助さんの秀吉も僕はとてもよかったです。嫉妬深さを絶妙に表現してくれていました。
石田三成を演じた吉田栄作さんは非常に憎たらしく上手いから憎たらしいわけですが、最後は専好のおかげで笑顔が観れてよかったです。
専好を演じた野村萬斎さんは、僕は野村萬斎さんの事が好きなのでもちろん良かったのですが、たぶん好き嫌いが分かれるだろうなとは思いました。
やりすぎに感じる人もいるのではと思うのですが、僕はそんな野村萬斎さんらしさが大好きです。
感極まるシーンとかはシリアスにリアルに演じられていて心打たれます。
個人的には前田利家を演じた佐々木蔵之介さんがすごくよかったです。
『花戦さ』の中での前田利家の描写がいいということもあると思いますが、だとしてもすごく魅力的でした。表には出さない優しさがすごくよかったです。
冒頭にも書きましたが『花戦さ』は非常にロマンを感じる映画です。
悲しいシーンも多いですが、きちんと救われる終わり方をしてくれていますし、「観てよかったぁ」と思わせてくれる映画です。
最近時代劇観てないなぁという人もいるかと思います。
是非久しぶりにいかがでしょうか。
おすすめ映画です。ぜひ。
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